前章(帰属の原理 – 第四章)では、帰属離脱が引き起こす恐怖の構造を、連鎖モデルと階層モデルの二側面から記述した。そこで明らかになったのは、帰属喪失への恐怖が進化的に刻まれた本能的反応であり、変容には構造的に恐怖が伴わざるを得ないという帰結であった。しかし、この恐怖は人間一般に普遍的な原理であるだけでなく、個々人の発達史において具体的な形をとって内面に定着する。排除への恐怖がなぜこれほど強固に個人を縛るのか、その問いに答えるには、帰属意識がそもそもどのようにして形成されるのかを辿る必要がある。

本章(帰属の原理 – 第五章)では、帰属の二類型——受動帰属と能動帰属——の区別を導入し、帰属意識の発達的起源を記述する。幼少期に環境から与えられる帰属がいかにして無意識的に固定化されるか、文化的信念と条件づけがいかにして世代を超えて連鎖するか、そして能動的な帰属選択が可能になる条件とは何かを順に検討する。恐怖の構造が個人の内部に刻まれる過程を理解することは、変容の6段階プロセスにおいて「癒着の認識」がなぜ困難であるかを原理的に説明する基盤ともなる。

受動帰属:群れ内役割の固定化と無意識的形成

帰属の原理において、帰属には受動帰属と能動帰属の二類型が区別される。受動帰属とは、幼少期に環境から与えられる帰属のことであり、当人が主体的に選択したものではなく、生まれ落ちた環境の中で自動的に形成される帰属意識を指す。これに対し能動帰属とは、憧れや使命感を契機として自ら新たな帰属先へ移行する帰属のことである。この二つは帰属意識という同一の原理の異なる発現形態であるが、形成のメカニズムと当人の主体性の関与において質的に異なる。

最初の帰属意識は、群れの中で与えられた役割が繰り返し確認されることを通じて無意識的に形成される。幼少期の人間にとって、家族という最初の群れの中で自分がどのような存在として扱われるかは、生存そのものに関わる情報である。「しっかり者のお姉ちゃん」「甘えん坊の末っ子」「手のかかる子」といった役割の付与は、周囲の大人たちの言動を通じて反復的に行われ、子どもはそれを自己の本質として受け取る。ここで重要なのは、この過程が意識的な自己定義として行われるのではなく、環境からの反復的なフィードバックを通じて、いわば浸透するように自己像の内部に沈殿していくという点である。

初期自己像を固定する要因は単一ではなく、育てられ方、周囲の人間関係、経済的環境、受けた評価といった複数の外的要因の複合として成立する。ある子どもが「優秀な子」として帰属意識を形成するか、「問題のある子」として形成するかは、遺伝的素因よりもむしろ、どのような環境的フィードバックが反復されたかに大きく依存する。この意味で、初期の帰属意識は環境の産物であり、当人の選択の結果ではない。第三章(帰属の原理)で述べた帰属意識の機能的本質——自己安定化の適応装置——は、この発達段階において既に作動している。幼い子どもは群れの中での自分の位置を安定させるために、与えられた役割に適応し、それを自己の一部として取り込むことで心理的安定を確保する。

この受動帰属の過程は、第二章(帰属の原理)で論じた帰属の無意識性と直結する。帰属が多くの場合当人に意識されないまま作動する不可視のメカニズムであるという特性は、まさにこの発達段階において基礎が敷かれる。物心がつく以前に形成された帰属意識は、意識的な記憶としてアクセスすることが困難であり、それゆえに自分がなぜそのように感じ、考え、行動するのかを自覚することが原理的に難しくなる。動組成理論(TDC)の癒着モデルにおいて、アイデンティティと自己概念の癒着が変容を構造的に阻害するとされるのは、この発達的起源に遡ることで一層明確になる。癒着は後天的に生じた歪みではなく、発達上の自然な帰結として形成されたものだからである。

物心の発生と能動的帰属選択の前提条件

受動帰属から能動帰属への移行が可能になるためには、一つの決定的な前提条件がある。それは物心の発生、すなわち自己を対象として認識できるようになることである。自分が何者であるか、自分がどこに属しているかを問うためには、そもそも「自分」という概念が成立していなければならない。物心がつく以前の段階では、帰属は環境によって一方的に付与されるものでしかありえない。

物心の発生とは、ここでは自己認識の機能が一定の水準に達し、自分の状態や位置を対象化して把握できるようになることを意味する。この段階に至って初めて、「自分はここに属しているが、別の場所に属することもできるのではないか」という問いの萌芽が生じうる。第二章(帰属の原理)で論じた帰属欲求と帰属先の選択可能性の三層的区別——帰属欲求そのものは根源的で回避不可能であるが、具体的にどこに帰属するかは選択可能であり、さらにその帰属を自覚できているか否かという認識の層がある——のうち、能動帰属が関わるのは第二層と第三層である。帰属先を意識的に選ぶという行為は、物心の発生なしには構造的に成立しない。

ただし、物心が発生したからといって、直ちに能動的な帰属選択が行われるわけではない。物心がつく時期は、すでに受動帰属によって初期自己像がかなりの程度まで固定されている段階でもある。前章で述べた恐怖の構造——排除→孤立→生存保証感の消失→死という階層的連鎖——は、この初期帰属が形成される過程で同時に刻まれるものである。初期帰属への疑いなき受容は、群れからの排除が生存の危機に直結するという進化的に刷り込まれた恐怖に根差している。幼い子どもにとって、自分が属する家族や共同体の価値観や規範を疑うことは、帰属の喪失を意味しうるがゆえに、本能的に回避される。

この構造は、能動帰属が成立するためには、受動帰属の強固な拘束力を何らかの形で揺さぶる契機が必要であることを意味する。その契機がなければ、物心がついた後も、初期帰属に対する無自覚な忠誠が持続し、帰属先の選択可能性は原理的に存在しながらも実際には行使されないまま推移する。帰属の原理が記述する半決定論的立場——初期条件の拘束と後天的選択の自由が共存する——は、まさにこの発達的構造を反映している。初期条件は強力な拘束力を持つが、それは絶対的な決定ではなく、条件次第で後天的な選択の余地が開かれる。

文化的信念の無自覚な吸収と条件づけの世代間連鎖

受動帰属の形成を駆動するメカニズムをさらに精密に記述するためには、文化的信念の吸収と条件づけの構造に踏み込む必要がある。帰属態動統論において、人間は幼少期に生存のために文化的信念を無自覚に吸収する「スポンジ」として記述される。この比喩は修辞的なものではなく、発達段階における認知の特性を端的に指し示すものである。

幼少期の人間は、自分が生まれ落ちた環境の信念体系——何が正しく何が間違っているか、何が価値あるものでありないものか、どのように振る舞えば受け入れられるか——を、批判的検討なしにそのまま取り込む。これは認知能力の未発達ゆえの受動性であると同時に、群れの中で生存するための適応的戦略でもある。群れの信念体系に同調しない個体は排除のリスクを負うという進化的圧力が、信念の無批判的吸収を促進する方向に作用してきたと考えられる。この過程は、前章で論じた恐怖連鎖構造——失敗→無能感→排除リスク→恐怖——の発達的基盤を構成するものである。排除への恐怖は抽象的な概念として学習されるのではなく、日常的なフィードバックの蓄積を通じて身体的・情動的な水準で刻まれる。

この信念の吸収を具体的に媒介するのが、親や養育者による報酬と罰の条件づけである。ある行動に対して称賛や愛情が与えられ、別の行動に対して叱責や無視が返されるという反復的な経験を通じて、子どもは「こうすれば受け入れられる」「こうすると排除される」という帰属の条件を学習する。この条件づけは、第二章(帰属の原理)で述べた帰属の無意識性を発達的に基礎づけるものでもある。条件づけによって形成された行動パターンや信念は、意識的な記憶としてではなく、行動の傾向性や情動反応のパターンとして身体に刻まれ、後に当人がそれを自覚しようとしても直接的にアクセスすることが困難な領域に沈殿する。

ここで重要なのは、親や養育者が子どもに施す条件づけは、多くの場合、その親や養育者自身が幼少期に受けた条件づけの再演であるという点である。帰属態動統論はこの現象を条件づけの世代間連鎖として記述する。ある家庭における「正しい」振る舞いの基準は、その家庭の親が育った環境で「正しい」とされていた基準を引き継いでいることが多い。この連鎖は意識的に伝達されるものではなく、無自覚に再生産される構造である。親は自分が受けた条件づけの構造を見抜くことなく、それを自明の前提として子どもに適用する。

この連鎖構造は、帰属の原理が記述する帰属意識の無意識的作動の世代的な拡がりを示すものであり、個人の帰属意識が個人史を超えた文化的・歴史的な連鎖の中に埋め込まれていることを意味する。第三章(帰属の原理)で論じた帰属意識の機能的本質——帰属を通じた自己規範の生成原理——は、この世代間連鎖の構造によって、個人の内部で生成される規範が実際には文化的・家族的な連鎖の末端にあることを照らし出す。「自分はこうあるべきだ」という内的規範は、自分の内部から自律的に生じたもののように感じられるが、その実態は、世代を超えて伝達された条件づけの蓄積が自己規範の形をとって発現したものである場合がある。

帰属態動統論は、この条件づけの構造を見抜くことが自律的思考の前提条件であると主張する。ここでいう「見抜く」とは、条件づけの存在を知的に理解するだけでなく、自分自身の思考や行動のパターンの中にその条件づけの痕跡を同定し、それが自明の前提ではなく歴史的に形成された構造であることを認識することを意味する。この認識なしには、帰属先を主体的に選び直すという能動帰属の行為は、旧来の条件づけの枠内で行われる見せかけの選択にとどまる危険がある。第二章(帰属の原理)で述べた帰属の三層構造のうち第三層——自分がどこに帰属しているかの自覚——が重要となるのは、まさにこの文脈においてである。条件づけの構造を見抜くことは、自分がどのような帰属に無自覚に囚われているかを認識するための不可欠な契機となる。

この主張は、パブロフの条件づけにおける刺激と反応の結合と、アイデンティティと自己概念の癒着が構造的に同型であるという動組成理論の洞察とも接続する。条件づけでは本来独立な刺激と反応が反復経験を通じて不可分に結びつくが、癒着もまた、本来は帰属先の集合にすぎないアイデンティティが自己概念そのものと不可分に結びつく現象である。条件づけにおける「消去」——結合を解除するプロセス——は、癒着モデルにおける「切り離し」と構造的に対応する。受動帰属の形成過程が条件づけのメカニズムによって記述できるという認識は、変容の道筋が条件づけの消去と構造的に同型の操作を要することを理論的に示唆する。

ただし、条件づけの世代間連鎖を見抜くことは、それを見抜くための認知的能力——メタ認知——をすでに前提としている。この前提がすべての人に等しく備わっているわけではないという問題は、理論のアクセシビリティに関わる重大な課題であり、帰属態動統論自身がその内部批判として引き受けている論点である。変容モデルが暗黙に前提とするメタ認知能力の高さが理論の普遍性を脅かしうるという認識は、万人向けフレームワークの設計や間接的内省の設計原理の探求へと接続する。条件づけの構造を「見抜く」ことが困難な層に対して、問いの連鎖による間接的な気づきの促進や、帰属欲求の普遍性を前提とした所属感覚の意図的再設計が、代替的な経路として探求される。

パターンの意識的な破壊:連鎖を断つ条件

条件づけの世代間連鎖は、パターンを意識的に破らない限り継続する。帰属態動統論はこの認識を明確に提示する。連鎖の持続は、連鎖の存在が見えていないがゆえの自動的再生産であり、意志の弱さや道徳的な怠慢によるものではない。この点は、帰属態動統論が変容の困難を個人の意志力不足に帰さないという思想的立場と一貫している。

パターンを「意識的に破る」とは、具体的には以下の過程を指す。まず、自分の行動パターンや信念体系の中に、世代間で伝達された条件づけの痕跡を同定する。次に、その条件づけが形成された当時の環境的条件と、現在の自分が置かれた環境的条件が異なることを認識する。そのうえで、当時は合理的であった推論や行動規範が、現在の文脈では不合理であるか、少なくとも必然的ではないことを認める。この過程は、実存的基盤において「こだわりの未更新が人生を縛る構造」として記述される現象——形成当時には合理的だった推論が前提条件の変化後も更新されず凝り固まった蓄積——の発達的な根源に他ならない。

この過程は、変容の6段階プロセスにおける「俯瞰」と「癒着の認識」に直接対応する。受動帰属によって形成された初期帰属を俯瞰的に眺め、それが自明の真実ではなく環境的条件づけの産物であったことを認識する。この認識が「切り離し」の前提を作り、「選択」の余地を開く。条件づけの構造を見抜くことが変容プロセスの入口に位置するのは、この発達的構造を踏まえれば論理的な必然である。

しかし同時に、パターンの意識的な破壊が容易でないことも、帰属の原理から説明される。前章で論じた旧帰属の自己免疫的防衛構造——既存の帰属パターンを疑おうとしても、疑う思考自体が旧帰属の認知枠組みで処理されるため、合理化・正当化が自動発動する——は、条件づけの世代間連鎖の文脈においても同様に作動する。親から受け継いだ信念体系を疑おうとする試みは、その信念体系そのものによって「不孝」「恩知らず」「生意気」といった否定的カテゴリーに分類され、疑いの動機そのものが抑圧される。帰属離脱への恐怖が発達的に刻まれた結果、初期帰属への疑いは排除リスクのシグナルとして自動的に検出され、回避行動が誘発される。この循環構造が、条件づけの連鎖が意識的な介入なしには自動的に持続する理由の核心にある。

青年期の環境激変——帰属を揺さぶるイベント装置

受動帰属の強固な拘束力を揺さぶる契機として、帰属態動統論は人生の移行期、とりわけ青年期における環境の激変を位置づける。進学、就職、引っ越し、家族構成の変化といったライフイベントは、それまで自明であった帰属の前提条件を物理的・社会的に変化させることで、帰属意識を強制的に揺さぶるイベント装置として機能する。

この「イベント装置」という位置づけには、帰属の原理に基づく理論的な根拠がある。次章(帰属の原理 – 第六章)で論じる帰属・行動・環境の三角相互作用モデルにおいて、環境の変化は帰属意識と行動の両方に影響を及ぼす独立した変数として位置づけられる。環境が強制的に変更されることで、それまで安定していた帰属・行動・環境の均衡が崩れ、帰属意識の再編が不可避的に迫られる。青年期の環境激変は、この三角相互作用モデルにおける環境の側からの強制的介入として理解できる。

たとえば、地方の小さな共同体で「優秀な子」として帰属していた個人が、都市部の大学に進学することで、その帰属先の前提条件が根本的に変化する。周囲の水準が変わることで、「優秀な子」というカテゴリーへの帰属意識が揺らぎ、自己像の再編を余儀なくされる。この揺らぎは苦痛を伴うが、同時に、それまで無自覚に前提されていた帰属の構造が可視化される契機でもある。変容の6段階プロセスにおける「俯瞰」が自然発生的に引き起こされる条件が、ここに生じる。

ここで注意すべきは、環境の激変が必ずしも能動帰属への移行を導くわけではないという点である。前章で論じた恐怖の階層構造——排除→孤立→生存保証感の消失→死——が強力に作動する場合、環境の変化は能動的な帰属選択ではなく、新たな環境への受動的な適応、すなわち新たな受動帰属の形成を引き起こすにとどまりうる。青年期の環境激変が帰属を「揺さぶる」ことと、帰属先を「選び直す」ことの間には、原理的な飛躍がある。この飛躍を可能にするのが、物心の発生に基づく自己認識能力と、条件づけの構造を見抜く認知的操作である。環境激変は必要条件であっても十分条件ではなく、揺さぶりが能動帰属へと結実するためには、揺さぶりの中で自己の帰属構造を対象化して認識する営みが伴わなければならない。

この認識は、帰属態動統論が変容を「自動的に起こるもの」としてではなく、構造的な条件のもとで主体的に遂行される過程として記述する立場と一致する。環境が変われば人は変わるという素朴な環境決定論も、意志さえあれば人は変わるという素朴な意志論も、いずれも帰属の原理の記述する構造を十分に捉えていない。受動帰属の拘束力、条件づけの世代間連鎖、恐怖の階層構造、そしてそれらを揺さぶる環境的契機と、揺さぶりの中で帰属構造を自覚する認知的操作——これらの要素が複合的に作用する中で、初めて能動帰属への移行の可能性が開かれる。

受動帰属と能動帰属の関係——対立ではなく連続

受動帰属と能動帰属の二類型は、対立する二つの状態としてではなく、連続的な発達の中で一方から他方への移行が生じうる関係として理解される。すべての人間は受動帰属から出発する。生まれ落ちた環境を自ら選ぶことはできないのだから、最初の帰属は必ず受動的に形成される。能動帰属は、受動帰属の上に——多くの場合、受動帰属との葛藤を経て——成立するものである。

この連続性は、動組成理論における癒着状態と解放状態の関係と構造的に対応する。癒着モデルにおいて、癒着は発達上自然な状態であり病理ではないとされるのと同様に、受動帰属は発達の初期段階において適応的かつ不可避な状態である。解放モデルへの発達後も癒着が完全に消滅するわけではなく、ストレスや疲労時に自発的に回復しうるという動組成理論の記述は、能動帰属を獲得した後も受動帰属のパターンが完全に消去されるわけではないという発達的事実と対応する。

能動帰属への移行を駆動する動機としては、憧れと使命感が挙げられる。第七章(帰属の原理)で詳述する帰属意識と集団参入の正のフィードバックループにおいて、「こうなりたい」という憧れが新たな帰属先の候補を示し、そこへ向かう行動を動機づけるとされるが、この憧れの発生もまた、受動帰属の文脈の中で生じる。ある個人がどのような対象に憧れを抱くかは、その個人がそれまでの人生で何を「知り」、どのような像に触れてきたかに依存する。第二章(帰属の原理)で論じた像の発生源——直接体験に限らず噂・伝聞・メディア等あらゆる「知ること」から像は発生する——という認識は、ここで再び重要性を帯びる。情報環境という外的条件が、能動帰属の候補となる像の範囲を因果的に規定するからである。

この認識は、個人の運命が自由意志だけでなく情報環境に因果的に規定されるという帰属の原理の半決定論的立場を発達的文脈においても支持する。能動帰属は主体的な選択であるが、その選択肢の範囲は受動帰属の過程で形成された認知的枠組みと情報環境によって制約されている。選択の自由は絶対的なものではなく、構造的な条件のもとで開かれる限定的な自由である。この限定性を認識したうえで、なお選択の余地が存在することを示すのが、帰属の原理の立場である。

本章では、帰属の二類型——受動帰属と能動帰属——の区別を導入し、帰属意識の発達的起源を記述した。最初の帰属意識は群れ内で与えられた役割の固定化により無意識的に形成され、文化的信念の吸収と条件づけの世代間連鎖がこの形成を駆動する。条件づけの構造を見抜くことが自律的思考と能動帰属の前提条件であり、青年期の環境激変が帰属を揺さぶるイベント装置として機能するが、揺さぶりが能動帰属へと結実するためには認知的な自覚が伴わなければならない。前章で論じた恐怖の構造は、この発達的過程の中で個人の内部に刻まれるものであり、受動帰属の拘束力の強さと、それを乗り越える困難さの発達的根拠を提供するものである。

次章(帰属の原理 – 第六章)では、帰属意識が実際にどのようにして変容を生み出すのか、そのダイナミクスを記述する。帰属・行動・環境の三角相互作用モデルと、像を起点とする自己変容の循環モデルを導入し、変容が多経路的かつ循環的に進行する力学を明らかにする。